SDGs教育プロジェクト

当プロジェクトでは、当団体が学校と社会をつなぐ役目を果たし、2020年4月から全面実施となった小学校の新学習指導要領前文の中にある「児童が持続可能な社会の創り手となること」に沿った学習を創造し、実践を支援することによって、教育を通してSDGsの実現を目指しています。
当プロジェクトは、2021年度からの「エフピコ環境基金」の助成により始まりました。

1.SDGsの中の
「防災」と「気候変動」

東日本大震災から10年が経過した今、被災地においても震災の記憶の風化が進んでいます。小学校1~6年生で震災の記憶のある児童は既にいません。震災の記憶を風化させず、教訓を基にした自助と共助の防災力を育てる学習を継続していくことは、まさに被災地の使命です。 気候変動は、世界全体の解決すべき最重要課題です。日本においても、近年は地球温暖化等が原因とされる大型台風や集中豪雨が多発して毎年、甚大な被害が起きています。小学校の段階で気候変動は、現代的諸課題の一つとして教科横断的に扱われています。しかし、プログラムとして学習しないと、気候変動に対する資質・能力はなかなか育ちません。気候変動の「緩和」と「適応」と言われても、児童はもちろん先生方もよく知らないのが現状です。
よって、世界が目指すべきSDGsの中で、被災地の使命としての防災(ターゲット11.B仙台防災枠組)、世界的な課題である気候変動を核とした環境(ターゲット13.3気候変動に関する教育)、この二つの課題を切り口として持続可能な社会の創り手を育て、教育(ターゲット4.7持続可能な開発のための教育)でSDGsの実現を目指していきます。なお、防災と気候変動の二つの課題は目標や内容などで関連し、SDGsの他の課題ともつながっていくものと捉えます。防災と気候変動を中心に取り扱いつつ、再生可能エネルギーや食品ロス、海洋ごみなどの学習も創造・実践していきます。

  • 11.B
    仙台防災枠組
  • 13.3
    気候変動に関する 教育
  • 4.7
    持続可能な開発の ための教育

2.独自のカリキュラム・
マネジメント

防災や気候変動の学習は教科や領域でないために国としてのカリキュラムは存在せず、教科書もありません。防災や気候変動の学習を体系化した学びにするために、カリキュラムを編成しました。
防災学習のカリキュラム編成に当たっては、文部科学省の研究開発学校制度の指定を受けて創設された仙台市立七郷小学校の「防災安全科」を参考にしました。七郷小学校の場合、特例で新領域「防災安全科」を新設し、各学年それぞれ年間30~35時間の防災及び安全学習を行っていました。「防災安全科」のカリキュラムを基に、特例がない一般の小学校でも取り組むことができるようなカリキュラムに再編成しました。
気候変動学習においては、個々の学習プログラムは存在するものの、小学校の教科等に体系的に位置付けられたカリキュラムとなると事例が見当たりません。そこで、学習指導要領や教科書、参考となる資料等を基にカリキュラムの編成を行いました。 防災学習及び気候変動学習のカリキュラムの中身は、目標と内容、取り扱い例、カリキュラム表など、学習指導要領に沿ったものとなっています。

3.プログラム・デザイン
3つの特徴

カリキュラムを受けて、個々の学習プログラムを作成しています。作成上の観点は以下のとおりです。

① 新学習指導要領に沿った学習であること

学習指導要領前文で理念として示された「児童が持続可能な社会の創り手となること」を目指します。「よりよい社会を創るという理念を学校と社会とが共有」し、資質・能力の一つである「現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力」を育成していきます。

② 教科等に位置付けること

学習プログラムが小学校のどの学年のどんな教科及び単元の授業に位置付けられるかを明確にします。困難な場合は、総合的な学習の時間の単元として編成し、他教科等との関連を図ります。

③ 教科横断的な学習であること

新学習指導要領の理念を実現するための方策の一つであるカリキュラム・マネジメントの中で示された「各教科等の教育内容を相互の関係で捉え、学校の教育目標を踏まえた教科横断的な視点で、その目標の達成に必要な教育の内容を組織的に配列していくこと」を試みます。よって、学習プログラムの単元が複数の教科等にまたがっている、または、複数の教科等に関連しているようになります。
これらの観点を満たすように学習プログラムを作成していきました。1時間の学習プログラムの場合は、講話に加えて活動も取り入れるようにしました。数時間以上の学習プログラム(単元)の場合は、課題を調べたり植物を育てたりする中で考えを深めさせるような内容にしました。

4.支援事例

具体的な進め方としては、先生方との打ち合わせを通して、総合的な学習の時間で実施することもあれば、理科と家庭科を組み合わせたり、国語と社会と道徳なども組み合わせての教科横断的な学習になる例もあります。

支援事例:中野栄小学校第6学年(2022年度)

ケンタロ・オノ氏による講話 SDGsに関する図書の貸出 クラス全体での話し合い

主な支援内容
  • ・学習プログラム、ワークシートの提供
  • ・出前授業「国がなくなる?キリバス共和国と地球温暖化」(ケンタロ・オノ氏)
  • ・SDGsに関する図書の貸出
  • ・SDGsに関する資料の掲示
  • ・意見交流会の際のゲストティーチャー(ケンタロ・オノ氏)

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5.事後アンケートと感想

2021年度のSDGs教育プロジェクトの事後アンケートと感想です。先生方のアンケート結果を見ると、「持続可能な社会の創り手」を育てるためのSDGsに関わる学習(現代的諸課題を取り上げた学習)は大切だと思っている先生たちでした。
「学校の体制だけでは厳しい体験的な学習を提供してもらった」、「支援のおかげで児童の深い学びにつながった」などの感想をいただきました。

先生方のアンケート結果より

先生方のアンケート結果より

先生方から

  • ●海洋ゴミのサンプルを児童数分用意していただき、どのようなごみがあるのか実感できた。具体的な資料(数値)から、SDGsについて真剣に考えなければと、危機感を持った児童が多く見られ、よい学習になった。
  • ●毎年5年生でグリーンカーテンに取り組んでいましたが、どうしてもうまくいかず、グリーンカーテンの効果を確かめることができずにいました。今回、グリーンカーテンについてのご支援をいただいたことで、児童はグリーンカーテンの効果を実感し、大きな学びを得ることができました。また、出前授業に来ていただいたことも、児童の今後につながるよい機会だったと思います。本来であれば、何度かお越しいただいてもっとたくさん学ばせたいという気持ちもありました。ぜひまたご協力いただき、そのときには今回できなかった授業も体験させていただきたいと思います。
  • ●グリーンカーテンは家庭科の教科書にも取り上げられていますが、自分たちで体験することで、より効果を実感することができたようです。家庭科の単元「すずしく快適な住まい方」を考える学習の中でも、児童から環境に配慮した考えがたくさん出されました。体験活動の大切さを改めて感じました。
  • ●学校の体制だけでは厳しい体験的な学習を提供していただきありがとうございました。子供たちは体験学習をとおして深い学びに触れることができました。
  • ●やはり、本やインターネットだけでは分からないことがあり、その一つが実際に課題の解決に向けて実践に取り組む人々の存在である。出前授業そのものをとおして、「このような活動をしている人が身近なところにいるのだ。」という意識を持つことができたのは、子供たちにとって大きな学びであったと思う。
  • ●出前授業が子供たちの考えるきっかけとなり、課題づくりに大いに役立ちました。また、学習の終わりでは、ケンタロ・オノさんの話で今まで学習したことを深める姿が見られました。2回も来ていただきありがとうございました。
  • ●とても充実した学習内容でした。未来につながる学習としてこれからも継続的に行っていく必要性を強く感じました。
  • ●学習に関わるプログラムや物品のご支援をいただき、たいへんありがたかったです。このご支援のおかげで、児童の深い学びにつながりました。誠にありがとうございました。
  • ●たくさん支援いただき、ありがとうございました。
  • ●1年をとおして関わりを持っていただき、ありがとうございました。コロナ禍という活動が限られる中で体験的な活動ができ、児童たちも毎回とても楽しみにしていました。また機会があればよろしくお願いいたします。
  • ●今回、グリーンカーテンの準備や指導をしていただき、たいへん助かりました。

6.実施校数および児童数等

学校からの相談を受けて実際に学習支援を継続して行ってきました。2021年度に支援した学校は計4校、児童数は543名、訪問回数は約50回となりました。2022年度は、計7校、児童数624名、訪問回数は12月時点で約35回となっています。支援の実施状況は、以下のとおりです。

2021年度
学校名 学年 人数 テーマ 主な支援内容
仙台市立中野栄小学校 4 40 環境 グリーンカーテン設置・撤去
出前授業4回
仙台市立南小泉小学校 5 86 省エネ グリーンカーテン設置・撤去
出前授業3回 土、プランター等
仙台市立中野栄小学校 6 83 SDGs 出前授業、リーフレット
ゲストティーチャー
仙台市立七郷小学校 6 129 海洋ごみ 学習プログラム、出前授業
岩沼市立岩沼西小学校 6 175 気候変動 Web教材ツール
2022年度
学校名 学年 人数 テーマ 主な支援内容
仙台市立南小泉小学校 5 82 省エネ グリーンカーテン設置・撤去
出前授業2回
土、プランター等
仙台市立中野栄小学校 4~6 6 SDGsクラブ 太陽光発電ミニパネル
ろ過器用の物品
仙台市立泉松陵小学校 5 55 地球環境問題 出前授業2回
Web教材ツール
学習塾あすなろ学院 小4~中2 21 エネルギー 太陽光発電ミニパネル
リーフレット、出前授業2回
仙台市立中野栄小学校 6 64 SDGs 出前授業、図書貸出
ゲストティーチャー
仙台市立八木山小学校 5 91 気象・防災 出前授業2回
仙台市立七郷小学校 6 112 まちづくり 出前授業2回
仙台市立七郷小学校 4 130 リサイクル 出前授業
仙台市立北六番丁小学校 5 63 川環境 単元計画、梅田川資料、観察会・水質調査の補助

お問い合わせ

公益財団法人 みやぎ・環境とくらし・ネットワーク(MELON)
〒981-0933 宮城県仙台市青葉区柏木1-2-45 フォレスト仙台5F
TEL:022-276-5118 / FAX:022-219-5713
E-mail:melon@miyagi.jpn.org