1 概要
●学校 仙台市立中野栄小学校
●学年 第4学年1、2組
●児童数 70名
●教科等 教科横断的な学習(理科、総合的な学習の時間)
●単元名 『SDGsグリーンカーテンプロジェクト』
●授業時数 25時間
●実施時期 2021年5月~2021年11月
●外部連携 シンプル&スローライフの会、せんだいE-Action実行委員会、推進員
●支援の方向性
仙台市立中野栄小学校では、昨年度、6年生で「環境出前講話~キリバス編」を核としたSDGs学習プログラムを実施した。今年度は、更にグリーンカーテンの学習プログラムを提案したところ、4年生の総合的な学習の時間を中心に取り組んでいくこととなった。 仙台市環境共生課が行っている「杜々かんきょうレスキュー隊」の中の学習プログラム「みどりなライフ!~緑のカーテンで始めよう身近なエコ活動~」に申込みをしてもらい、NPO・シンプル&スローライフの会と仙台市環境共生課に協力してもらうことにした。
●主な支援内容
- ・学習プログラム、ワークシートの提供
- ・出前授業1「オリエンテーション」
- ・出前授業2「ヘチマ博士のお話」(シンプル&スローライフの会)
- ・出前授業3「苗を植えよう」(シンプル&スローライフの会)
- ・出前授業4「カーテンの効果を感じよう」
※コロナ禍の緊急事態宣言のため、学校単独で実施。 - ・出前授業5「グリーンカーテンを片付けよう」(シンプル&スローライフの会)
- ・土、肥料の準備
- ・グリーンカーテンの麻縄設置(シンプル&スローライフの会)
- ・ゴーヤとアサガオ、ヘチマの苗の提供(シンプル&スローライフの会)
- ・データロガーによる温度測定と結果の提供
- ・放射温度計の貸出(仙台市環境共生課)
- ・伊達武将隊の派遣(仙台市環境共生課)
- ・ゴーヤとアサガオの種の贈呈(仙台市環境共生課)
- ・休日中の水やり
2 支援の実際
●土の準備(5/13、21)
グリーンカーテンを設置する花壇を下見した。学校で土づくりから始められるように、培養土、赤玉土、石灰、鶏糞、有機肥料を準備した。「杜のめぐみ」(落ち葉や給食の残飯から作られた腐葉土)は学校で準備してもらった。
●「オリエンテーション」(5/27)
ストップ温暖化センターみやぎのスタッフによるオリエンテーションから単元を開始した。まず、「SDGsってなんだ?」と子供たちに問いかけた。マークに17色あること、6年生の社会と理科の教科書の最後の方に出てくるので知らなくてもだいじょうぶなことを確認した後、SDGsの内容に触れた。
次に、目標の中から13番を選択して、「気候変動ってなんだ?」と問いかけた。気候変動の原因、現在、起きている現象を紹介し、対策した場合としない場合の2100年までの気温変化のシミュレーションを見せた。かなりの驚きを持って受け止められた。
最後に「具体的な対策ってなんだ?」と問いかけ、その一つとしてグリーンカーテンを紹介した。他校のグリーンカーテンと中野栄小学校の先輩たちも取り組んだことに触れ、伊達武将隊につないでいった。
●「伊達武将隊による種の贈呈」(5/27)
伊達武将隊による演武を見て省エネトークを聞き、いっしょにダンスを踊るなど、楽しい一時となった。ゴーヤとアサガオの種を贈呈してもらい、第1時の導入が終了した。
授業後のアンケートを見ると、「SDGsに関心を持った」という子供は97%、「気候変動に関心を持った」は96%、「グリーンカーテンに関心を持った」は100%だった。感想からも、「大事に育てたい」、「しっかり育てます」、「気候変動を絶対、防いでやる」などの意欲的なものが多く見られた。単なるイベントに終わらず、目的意識を持たせ、これからの活動意欲を喚起させることにつながった。なお、アンケートと感想は集計してまとめ、小学校にもフィードバックした。
●「種をまこう」(学校単独)
給食の牛乳パックを再利用したポットにゴーヤまたはアサガオの種をまいた。5年理科の「種子が発芽する条件」の理解につながる学習となった。種の発芽率もあって、全員の種が発芽するには至らなかった。
●「ヘチマ博士のお話」(6/21)
グリーンカーテンを上まで大きく育てるには、ゴーヤとアサガオに加えて、ヘチマが必要となる。そこで、東京でヘチマを育てている農家の金井氏に来ていただき、ヘチマの話をしていただいた。夏の暑さを凌ぐためのすだれの紹介、グリーンカーテンの効果、ヘチマのひげと巻き付く習性、10m以上も成長して上に実を付けて種をまくことなど、ヘチマ農家だからこそ知っている内容を聞かせてもらった。
●「苗を植えよう」(6/21)
4年生の花壇に自分たちで育てたゴーヤとアサガオの苗、それとNPO・シンプル&スローライフの会と金井氏が育てたヘチマ、ゴーヤ、アサガオの苗を移植した。発芽しなかった子も牛乳パックの中の土を取り出して埋めるように促した。自分たちの苗と専門家が育てた苗との違いを感じた子もいた。
●麻縄の設置作業(6/21)
放課後、つる性植物が巻き付くための麻縄を花壇から4階まで設置する作業をシンプル&スローライフの会の方々とともに行った。通常のグリーンカーテン用ネットはプラスチック製だが、今回は使用後に自然に還る環境負荷の少ない麻縄を使用したので、台風のときの強風には切れやすく校舎の破損もなく安全である。下校する子供たちが興味津々に設置作業を見入っていた。
●休日の水やり作業
以前ならば、夏休みのプール開放があったので、やってきた子供たちが水やりをしていた。しかし、コロナ禍と猛暑のため、プール開放がなくなってしまったので、先生方が行わなくてはならなくなった。今回は、先生方、MELONのスタッフ、推進員の方で水やりを行っていった。
●「グリーンカーテンの効果を調べよう」(学校単独) 8月末にグリーンカーテンの効果を調べる出前授業を予定していたが、コロナ禍による緊急事態宣言下のために中止となった。学校単独で行ってもらうため、準備していた資料やワークシートなどを渡し、放射温度計を貸し出した。学校では、
- ・グリーンカーテンの面積から測定するCO2削減量
- ・日向と日陰の地表面の温度測定
- ・グリーンカーテンの陰に立って涼しさを体感することなどを行った。結果は以下のとおりである。SDGsの目標13「気候変動に具体的な対策を」のために取り組んできたグリーンカーテンの効果を実感させることができた。
実験のグリーンカーテンの面積 2×4=8㎡ |
中野栄小グリーンカーテンの面積 10×4=40㎡ |
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CO2の量 | 127㎏- CO2 | 635㎏- CO2 |
エアコンの台数 | 1台分 (1日1.5時間) |
5台分 (1日1.5時間) |
杉の木 | 9本分 | 45本分 |
横浜市環境科学研究所の資料を参考に作成
●温度測定用のデータロガーの設置と回収(7/20~9/1)
グリーンカーテンの日向と日陰の温度の違いを継続して測定するため、データロガーを設置した。1週間の温度変化は、次のとおりである。真夏日の日中には日向と日陰で5~10℃ほどの温度差が見られた。データロガーの結果も、学校に提供した。
●「グリーンカーテンを片付けよう」(10/27)
グリーンカーテンの撤収作業をシンプル&スローライフの会の方々とともに行った。今年はヘチマの実があまり付かなかったため、ヘチマたわしの制作はできなかった。その代わり、ヘチマ農家の金井氏から子供たち全員にヘチマたわしがプレゼントされた。プラスチックのたわしを使うよりも環境によいことを聞いて、たわしをうれしそうに受け取っていた。
3 振り返り
グリーンカーテンの学習活動をハードとソフトの両面から支援することができた。中野栄小学校4年生の先生方にはMELONによる学習プログラム自体を提案して実践したが、学校側の実情やコロナ禍の影響により、計画どおりに行えないプログラムもあった。あくまで学校の実情に沿って展開されることが肝要といえる。グリーンカーテンは4年生に限らず、6年生での理科の実験に活用されるなど、今後、複数の学年の教材としての活用も考えられる。
事後アンケートの結果を見ると、多くの子供たちが楽しく活動に取り組むことができた。グリーンカーテンによるCO2の削減効果を確かめさせるのは難しかったが、涼しさを実感できたことが分かる。5、6年生になったときに気候変動やSDGsの学習につながっていくことを期待する。