【訪問情報】
■訪問日:2022年6月17日(金)
■訪問先:宮城県漁業協同組合 指導部 指導課
■訪問者:
インタビュアー:MELON理事 石垣政裕、MELON情報センター 吉田美緒 ライター:MELON情報センター 早川昌子
去年は宮城県沖でイセエビが獲れた。MELON理事の石垣は、震災以降続けているボランティア活動の中で、こんな話を浜の人から聞いたそうです。地球温暖化による漁業への影響や漁業協同組合指導部の取り組みなどについて、宮城県漁業協同組合 指導部 指導課の小山さんと平塚さんにお話を伺いました。
獲れる魚が変わるとどうなるの?!
獲れる魚種は変わってきているという話は聞きます。イセエビが今後も本格的に獲れるようになるのかはわかりませんが、獲れる魚種が違えば漁具も獲り方も違う。必要となる漁具、漁法の先進地視察を行い情報収集。既存の漁業とのトラブルを回避するためにどんなルールが必要か等について検討・調整が必要となります」と小山さん。
漁業協同組合 指導部では、新たな魚種が獲れるようになると資源管理、既存漁業との調整は必須となり、許可を発給する宮城県との調整を基に、漁業に直接携わる方々と話合いを行い、課題にどう対応するかを考えていくのだそうです。
私たちが店頭で新鮮な魚を入手できるのは、様々なルールの中で漁業が円滑に進んでいることが前提なのだということを改めて知る機会となりました。
獲れる魚が変わるのはなぜ?
「宮城県沿岸はリアス式海岸となっており養殖に適している。沖合の海は、親潮・黒潮が混じり合う資源豊かな海であることは間違いないと思います。例えば今年は、ここ数年に比べると親潮が南下しイサダが獲れました」と言いながら小山さんが見せてくださった資料(JAFICテクニカルレビュー)には、「地球温暖化に伴い海水温が上昇し、全国各地で海水魚の魚種組成が変化しつつある」とあります。
宮城県水産技術総合センターの資料によれば、三陸沿岸海域は、黒潮、親潮、津軽暖流の影響を受ける複雑な海域で、「混合域」(図1)と呼ばれ、親潮は水温が低く、栄養塩がたっぷりと含まれているのが特徴で、生物を育む海流なので「親」潮という名前がついています。
農業における転作のように、気候変動に対応して魚種を変えていくという考え方はあるのか尋ねてみました。
「試験養殖などは青年部で取り組んだりしています。今までワカメをやったことがない浜で試してみることもありますが、アメリカザリガニやブラックバスのように外来種対策は必要不可欠であり宮城県との調整は必要です。慎重に考える必要がありますね」と小山さん。なお、漁法ごとに事務局が設置されており、許可がなければ勝手には漁をすることはできないそうです。
漁場の資源管理
漁業に携わる人たちが持続可能な漁ができるということが、私たちがいつまでもおいしい魚を食べ続けられることにつながります。水産庁のウェブサイトによると、新たな漁業法には、「漁業が国民に対して水産物を供給する使命を有し、かつ、漁業者の秩序ある生産活動がその使命の実現に不可欠であることに鑑み、(中略)水産資源の持続的な利用を確保するとともに、水面の総合的な利用を図り、もって漁業生産力を発展させることを目的とする」と明記されています。
「国は、漁場が適切かつ有効に利用されているかを確認するんです。生産力というのは、獲れる量ということに限ってなくて、質も重要になってきます。例えば、テレビでも紹介されましたが、戸倉の海で養殖しているカキは、震災前は過密状態だったものを震災後に間隔をあけて育てることで大きなカキが育ったという話です」と小山さん。
今年、宮城県漁業協同組合 指導部では、漁業法改正後の一斉更新にむけての実務が控えているそうで、養殖する場所や共同漁業権などについてのヒアリングももうすぐはじまるそうです。
また、今、大きな議論になっているアルプス処理水の対応についても、「漁業者には、10年間頑張ってきたものが、ふっとんでしまうのではという思いが強いです。またやりなおしになるかもと。頭では理解できるけど、風評はおきるだろうという思いがあります」
宮城の海の豊かさがずっと続くように
「宮城の海は豊かだと感じます。昨年はノリ、ワカメが不調でした。一方、カキ、ホタテ、銀ざけは好調だった感じです。特に銀ざけは、秋さけ等の不漁により、皮肉ですがいい値段がついています。あとは、タチウオ、トラフグが獲れました。西の方ではよく獲れる魚種ですがこちらでは珍しい。そうすると、調理方法などの普及も同時に進める必要がでてきます」
平塚さんによると、魚離れがすすむなか、獲れた魚が売れるようにと食育・魚食普及活動として料理教室なども開催しているそうです。「料理教室は、毎年、女性部がみやぎ生協と連携して実施しておりましたが、コロナ禍でここ3年は開催できない状況です。今年は様々な対策を講じ実施に向けて取り組んでいる最中です」
青年部や女性部の総会の場などでは、環境問題・漁業法改正などについて研修会を併せて実施しているそうです。MELONでも、今年5月に海洋プラスチックのセミナーを開催したばかり。海ごみについて尋ねると、漁具はプラスチックばかりなので、もともと浜ごとに持ち帰りのルールがあり、置く場所が決められているとのことでした。
「SDGsと言われています。漁業の場合は、魚を獲り続けられる環境について若い世代から理解するのは大事かなと思います。農協さんとの交流もあります。宮城のコメを魚の餌にするという事業などもあり、漁協と農協さんとタッグを組んで、オール宮城という取り組みを進めています」と小山さん。
他には、女性部でやっていることとして、小学生を対象に募集している『みやぎの海の子』作文があるそうで、「38回目の今年も募集するのでたのしみです」と平塚さん。
みやぎの海の子作文集には、子供たちの大好きなお父さんやおじいちゃんがいる海が好きという思いが詰まっていました。(後日、送付してもらい読みました。)
今回、小山さんと平塚さんへのインタビューを通じて、宮城の豊かな海がこれからも豊かであり続けて欲しいと願う人たちの思いと取り組みを知ることができました。
そして、魚が一層おいしくありがたく感じられるようになりました!
■称 号:宮城県漁業協同組合
■事業内容: 信用事業(貯金業務、貸付業務、為替業務・公共料金払込・年金のお受け取り)、共済事業、経済事業(購買事業、販売事業、その他の事業)
■設 立: 平成19年4月
■所 在 地 :〒986-0032 宮城県石巻市開成1番27
■WEBサイト https://www.jf-miyagi.com/