MELON会員団体訪問記 第13弾 ヤマト運輸株式会社 宮城主管支店 ~安全×環境でサステナブル目指す~

【訪問情報】
■訪問日:2025年2月19日(水)
■訪問先:ヤマト運輸株式会社 宮城主管支店
■訪問者:
インタビュアー:MELON理事 石垣政裕、写真・文:MELON情報センター 早川昌子、吉田美緒

ヤマト運輸株式会社 宮城主管支店と新宮城主管支店は、MELON(公益財団法人みやぎ・環境とくらし・ネットワーク)の法人会員となり、ストップ温暖化センターみやぎの令和6年度「SDGs環境出前講話」に環境・運輸のテーマで加わりました。MELONとの連携や自社の取り組み等について、宮城主管支店 妹尾主管支店長と、安全・コンプライアンス担当 開沼氏に話を伺いました。

MELON早川:「SDGs環境出前講話」のチラシは、宮城県を通じて県内の各学校に配布されています。そのメニューにヤマト運輸さんの「クロネコヤマト環境教室」を加えたところ、学校側から申し込みがあり、実施に至りました。

ヤマト運輸 妹尾主管支店長:メニューに加えていただき、大変ありがたいです。社会貢献できることは積極的に行いたいと考えています。来年度の計画はありますか?

MELON吉田:来年度も同様に実施したいと考えています。環境省の事業として実施すると4月以降に申請等があり、チラシは6月頃に配布予定です。
実際にクロネコヤマト環境教室をやってみて、いかがでしたか?

ヤマト運輸 開沼氏:最初は、とても緊張しました。改善点も見つかったので、次回に向けてサステナアンバサダー全員で練習したいです。クイズは子どもたちの反応が良かったですね。
また、ケンタロ・オノさんのキリバス講話と石井ひろ子さんの南極講話を見学させていただけて大変勉強になりました。ほかの講師の方との交流の場ができるといいですね。

MELON石垣:ヤマトグループのコーポレートサイトを拝見しましたが、環境への取り組みが多岐にわたっていて驚きました。環境への取り組みを始めたきっかけは何だったのでしょうか?

ヤマト運輸 妹尾主管支店長:2020年に経営構造改革プラン「YAMATONEXT100」を発表し、長期目標として「2050年GHG自社排出実質ゼロ」を宣言しました。
2022年には、「2050年温室効果ガス排出実質ゼロ」に向け2030年の具体的な削減目標を発表し、主要施策4つ掲げて取り組み進めてきました。また、環境への取り組みへのお客さまの関心も高まってきました。多くの車両を使用して事業を行う弊社は、気候変動対策に率先して取り組む責務があると考えています。

MELON石垣:環境対策は企業にとって負担になるという見方もありますが…。

ヤマト運輸 妹尾主管支店長:必要な投資はありますが、例えばEVに対して営業所の屋根に設置している太陽光パネルで発電した電気を使うことで、燃料費を削減できるなど、中長期的に経済性を確保できる対応を進めています。

MELON石垣:環境対策を現実的に進めていることに感銘を受けました。

ヤマト運輸 妹尾主管支店長:正しいバランスを考えながら進めていくことが重要です。

MELON石垣: これまでは、科学者などが環境問題を訴えることが多かったですが、経済活動と両立させる取り組みが重要だと考えています。

ヤマト運輸 妹尾主管支店長:ヤマトグループでは、他社に先駆けてEVを導入してきた経験を生かし、自社だけでなく、商用車ユーザーの脱炭素化に向けて、2024年10月にEVライフサイクルサービスの提供を開始しました。
2025年1月には、ヤマトエナジーマネジメント株式会社を新たに設立し、電力事業を開始します。EV化によって需要が増加する再エネを中心とした電力を調達します。また、物流事業者は、昼間に車両を稼働させ夜に一斉に充電を行うため、電カコストが多くなってしまいますが、ヤマト運輸独自のエネルギーマネジメントシステムを開発し、各営業所に導入することで効率的なエネルギーマネジメントを実現しています。
当社施設において、照明はLED化されていますが、冷暖房や24時間稼働のコンベアーなど、消費する電力量はかなりあります。また、エネルギーだけでなく、梱包材などの資源循環も視野に入れたさまざまな課題に取り組んでいます。環境への取り組みは自社だけでなく、業界全体で行うことが大切です。

宮城主管支店 主管支店長 妹尾真一氏

MELON早川:運輸は、子供たちにとって身近です。ヤマトさんの環境教室の中でもお話されていますが、例えば、静岡に住んでいるおじいちゃんおばあちゃんからの荷物は、翌日か翌々日には届きます。

ヤマト運輸 妹尾主管支店長:そうですね。だから、荷物をどう受け取るか、どう出すか、どう送るかということは身近な環境活動です。フードロスの問題が、1日3食のご飯に関わるのと同じです。

MELON石垣:やはり、すごく大事なことかなと思いますね。自分たちの生活の中でそういうことを考えているということは。

ヤマト運輸 開沼氏:環境教室で驚いたのは、子どもたちがワークシートにスラスラと記入することです。子どもたちの環境に対する意識の高まりを感じます。先日、教科書にオープン型宅配便ロッカー「PUDOステーション」が紹介されていると先生から伺い、驚きました。

ヤマト運輸 妹尾主管支店長:お客様からは一定の理解を得られていると思いますが、さらなる努力が必要です。引き続き、未来を担う子どもたちのために、環境への取り組みを強化していきます。

ヤマト運輸 開沼氏:ドライバー担当の社員向けにもサステナビリティ研修を実施しています。クイズやワ‐クシートを取り入れて分かりやすく伝えています。

MELON早川:社内でも地道な活動をされているんですね。

ヤマト運輸 開沼氏:来期はサステナビリティプログラムを宮城主管支店で実施するすべての人事研修に導入できるよう社内で働きかけています。

MELON早川:ほかに取り組んでおられることはありますか?

ヤマト運輸 開沼氏:宮城主管管下の営業所すべてにウォーターサーバーを導入し、マイボトル利用を推進した結果、自動販売機の利用が70%に減少しました。

MELON早川:皆さんがマイボトルを持参するようになったということなのですね。

ヤマト運輸 開沼氏:EVの運転指導も重要です。エコドライブを意識し急発進や急ブレーキを行わないことで、安全確保に加えてエネルギー使用量も抑えることができ、同じエネルギーで長く走行することが可能となります。今後、環境と安全に配慮したEV走行を正しく教育するためのEV指導員の設置などもすすめていきたいです。簡易に家庭のエネルギー使用状況をチェックできるツールに環境省の「うちエコ診断」がありますが、同様に環境と安全に配慮したEV走行についても、簡単に診断できる指標が欲しいと、 ドライバーから要望されており、検討したいところです。

MELON石垣:コーポレートサイトにおいて、ヤマトグループの環境・社会の取り組み目標達成状況を公開しているのも良いですね。子どもたちにも分かりやすいです。

ヤマト運輸 開沼氏:ヤマトグループは中期経営計画「サステナビリティ・トランスフォーメーション2030~ 1st Stage~ 」において取り組む環境・社会目標を詳細に設定し、その進捗をコーポレートサイトで公開しています。宮城主管においても、全社の目標を達成するため、宮城主管独自の目標を設定し、取組を推進しています。
例えば車両のエネルギー使用量削減に関するものでは、セールスドライバーの配達コースによって条件が異なるため、日標を一律に設定することはできません。配達コースごとに目標を設定し、公平性を保つようにしています。同じ車に乗って同じコースを配達するAさんとBさんがいて、エコドライブをしているAさんと、運転の仕方に課題のあるBさんの違いが急発進や急加速などの「急」の付く運転回数で現れるといった比較です。

MELON石垣:そうやって、日標の作り方などの細かいところも設計されているわけですね。配達コースの違いや、そのほかにも色々な要素があるから、どうやっているんだろうと思って聞いておりましたが、かなり、細かいところまで分析しているのですね。
本日はお時間いただきありがとうございました。

「SDGs環境出前講話」を含め学校等での講師活動は、開沼美保子氏(写真右)と横山美咲氏(写真左)含め4人交代で行っている。

今回のインタビューでは、ヤマト運輸株式会社が環境問題にどのように取り組んでいるのか、その具体的な方法や、現場の方々の試行錯誤、そして持続可能な企業活動への思いを知ることができました。ご協力ありがとうございました。

■訪 問 先:ヤマト運輸株式会社 宮城主管支店
■事業内容:貨物自動車運送事業、第一種貨物利用運送事業、第二種貨物利用運送事業、倉庫業、港湾運送業など物流事業全般および関連事業
■設  立: 平成17年3月31日
■所 在 地 :〒981-3206 宮城県仙台市泉区明通3-3-1
■WEBサイト https://www.kuronekoyamato.co.jp/