公益財団法人 みやぎ・環境とくらし・ネットワーク

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執筆■成瀬美幸  2008/12/3up
「伝説のスピーチ」からのおくりもの
 それはステキな出会いでした。とあるフォーラムでセヴァン・カリス・スズキの「伝説のスピーチ」映像を観る機会に恵まれたのです。
 一体何が「伝説」なんだろう?
 わずか数分間のスピーチの中で何が起こったっていうんだろう?
 日系4世の12歳で、ごく普通の女の子のスピーチがその後の世界を変えることになるなんて、誰が想像できただろう?

  1992年のブラジル、リオ・デ・ジャネイロの地球環境サミット。世界各国の代表者が集う会場に飛び入り参加したセヴァンは静かに、しかし堂々と語りはじめました。「あなたたち大人に是非生き方を変えてもらうためにやってきた、どうやって直すのかわからないものを壊し続けるのは、もうやめてください。」これから生きる子どもたちのために、かけがえのない地球を守ってほしい。そんな趣旨の内容です。スピーチと同時に映し出される静まりきった会場の様子。世界中からやってきたエライ人たちのみならず、その場にいた報道関係者や警備員までもが、放心したようにセヴァンのスピーチに釘付けになっているのです。政治や経済、建前などで、大人たちが誰も口にできなかった真実をセヴァンは勇気を持って言葉にしたから、多くの人々が共感したのです。スピーチはその後、ビデオや本を通じて世界中に広がり、今でも大きな影響を与え続けています。

 スローフードやマクロビオティックなど、あまり馴染みのない言葉の本当の意味を知りたいと思ったのはその時からです。成長し、生物民族学の道へ進んだセヴァンが提唱する「本当の豊かさ」とは何か?その答えを見つけるために、生き物と自然とのつながりを知りたいと思いました。
 
 「もっと早く、もっと多く」という言葉をよく耳にします。工業製品の場合、時間を節約すると→人件費の節約になり→販売価格が安くなると→安い方がたくさん売れる→経済成長(?) 
 この原理は生き物たちにも当てはめられています。農薬、化学肥料、抗生物質、遺伝子組み換え・・・より速く、より多くつくるために考えられた技術です。ゆっくりと成長して、精一杯活動して、ゆっくりと命をまっとうしていく。生き物にはその生き物の時間があるはずです。農業、漁業、牧畜業、養殖業などの中でそれが促進され、凝縮されていったとしたら?生物たちはとってもご機嫌ナナメ。それを口にする私たちも、何か違和感を感じ取っているはずです。例えば、牛乳パックに描かれている絵のような酪農牧場は、今はもう数えるほどしかありません。太陽が照りつける昼も、雪の降る夜も、広い牧草地で自由に乳牛を放し飼いにする。搾る量も通常の3分の1。その牛乳を飲んでみるとほんのり広がる甘み。今までにない格別な味わいでした。

 がんばるとか、無理をするのではなく、単純にスローライフは楽しいと思いました。その生き物の時間を短縮させず、ゆっくりと育んだいのちからもらうものは、とってもおいしいのです。もっとゆっくりでいい、急ぎすぎず、その生き物のペースでいい。忙しい日常で何となくイメージの悪いゆっくりという言葉が褒め言葉になる。そう願わずにはいられません。

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