公益財団法人 みやぎ・環境とくらし・ネットワーク

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執筆■大原英範  2009/8/4up
今読んでいる本から
 僕は自ら文章を書くというよりは他人様が書いた本を読むのが好きなので、コラムの順番が回ってくる度に何をテーマにしようかと思い悩みます。今回もコラムのテーマはどうしようかと悩んでいたのですが、少し視点を変え、今読んでいる『「エコ罪びと」の告白:私が買ったものはどこから来たのか?(フレッド・ピアス著、酒井泰助訳)』から環境に関することをご紹介したいと思います。今までのコラムのパターンを逸脱するかもしれませんが・・・。

 まずこの本に出会ったのは、私が住んでいる浜辺の町の図書館の新刊コーナーです。
いつもはジャンルに拘らず小説を中心に借りて読んでいるのですが、この日は「私が買ったモノはどこから来たのか?」の副題の文字が目にとまったことで、借りる本の1冊に入りました。
 
 
 ページを捲ると第1章が《自分の持ちモノを追いかける旅へ》・・・として、第2章以降には、いろいろなモノ(商品)、例えばコーヒーなどの食料品やTシャツなどの衣料品、パソコン・木材の日用品が目次に並んでいました。

 最初の章で気になった数値は「6000人」・・・先進国諸国の平均的な家庭の道具や食品や衣料がそろった生活を古代ローマ時代に再現したら6000人以上の奴隷が必要になるそうです。その奴隷に代わるのが機械でありそれを動かすためのエネルギーを使用して今の生活が成り立っていることに驚き、その利便をもたらすものの多くは、環境に影響を与えている。
 著者は、自分の持ちモノのフットプリントを知る旅に出て、そこで得られた情報から資源を消費することは恥じるべきか、それとも地域経済に貢献し、困窮する人々にいくらかのゆとりを与えたことを誇りに思うべきか、その問いの答えを見つけたい。という旅にでることになりました。

 その中から嗜好品のコーヒーを毎日5杯は飲んでいると思います。そのコーヒーについてご紹介したいと思います。もちろん著作権の関係もあり詳しい内容や結論は、ここで説明はできませんが非常に気になる内容でした。 

○コーヒー:フェアトレードは本当にフェアか?
 タンザニアのキリマンジャロ山腹にイギリスで急成長しているフェアトレード会社カフェダイレクトのバイヤーと著者が訪れた内容から・・・。
 その地域でキリマンジャロを生産している農家の方々(協同組合を設立)との意見交換から、フェアトレードとしてカフェダイレクトは国際市況がどうなろうと最低保証料を設定して、彼らのコーヒー豆を購入(競り)しているが、コーヒーの国際価格がフェアトレードの価格にも影響している。
 農民からはフェアトレードは行われているが、農家への対価があまりにも安く適切ではない。カフェダイレクトは農家から豆500gを1ドル60セントで買って、ロンドンで、13ドルで売る。それがフェアトレード?ロンドンで売られているコーヒー500g分の代金で、家族が1週間、暮らしていける。」という厳しい意見が出された。
 コーヒー豆は、農家から手を離れて保存処理→等級付け→梱包→ヨーロッパまで輸送→焙煎→豆を碾かれ→包装→小売店に配送→宣伝→消費者という工程を経なければならいこととからフェアトレードとはいえ、関係者の誰もが利益を得なければならない。
 しかし、農家も施肥、コーヒーの苗木を植え、育て、収穫し、果実から豆を取り出し、乾燥し、組合まで運び、重量を測って袋つめをしなければならない。彼ら多くの農家の住まいは雨漏りがし、豆を運んでくるのにオートバイすら乗っていない。自分の土地から組合まで歩いて運んでくる。祖父の代に植えられて老朽のために収量が減ったコーヒーの木を植え替えることもできずにいる。我々のコストも全て上がっている。だが、コーヒーの値段は下がり続けている。われわれ農民は、もうヘトヘトだ。私たちのことももっと考えてくれ。この言葉に著者は「消費者としてもっと高い値を請求しろと叫びたいと思った」とある。
 フェアトレードが、悪いのではないが、フェアにトレードされていない。その価格はタンザニアの生産者のために設定はされていない。その元凶は、カフェダイレクトではなく私たち消費者であると。

 コーヒーの章だけでもいろいろな発見があり考えさせられることがありました。もっとご紹介したいのですが、著作権に抵触しかねないので、皆さんも書店や図書館で手にする機会があれば一度、ご覧いただければと思います。

 著者のフレッド・ピアスですが、書籍の著者紹介によると1951年生まれ、ロンドン在住のジャーナリスト。「ニューサイエンテイスト」誌の元編集者で20年以上にわたって環境・科学・開発の諸問題について執筆し、同誌の環境コンサルタントをつとめ、「インディペンデント」「ボストン・グローブ」「タイム」などの英米の各紙誌に寄稿している。また、世界自然保護基金(WWF)、国連環境計画、ユネスコ、世界銀行、欧州環境機関などに報告書を提出している。2001年にはイギリスの年間最優秀環境ジャーナリスト賞など数々の受賞経験があります。
 
 
 

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