公益財団法人 みやぎ・環境とくらし・ネットワーク

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COP15 MELON代表派遣現地ルポ【旧サイトの内容です】

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12月12日(土)曇り COP15 2日目
  今日は、昨日に比べて慣れてきて、会場の勝手がわかってくる。会場の収容能力である1万5,000人にほぼ達しているとして、翌週からはNGO入場者のバッジ発行に制限を加えるとのニュースが届いた。
 昨日に比べて、会場はさらに混雑している。いよいよ、交渉が佳境に入ってきた証か。朝9時前に会場に入って最初に目にするのが、NGOのアトラクション(写真・右)。かわいいぬいぐるみが大人の目を引きつける作戦で、趣向を凝らせてなかなか良い仕上がりだ。続いて、文書配布コーナーで、本日のイベントプログラムを入手する。あわせて、本日朝八時半発行の議長のドラフトも入手できた。内容は二酸化炭素の削減目標が具体的に記されていて、なかなか面白い。
11/12朝8:30発行の議長のドラフト
 9時からは、プログラムで興味を持った二酸化炭素の地下貯蔵(CCS)のセッションに参加する。サイドイベントである。

 10時からは、COP15の本会議に出席する(写真・左)、というよりも、会議場に入って雰囲気を味わったという方が正しい。
 その後、別の会場で各国の政府代表が着席するシートを見る(写真・右)。意外に狭く窮屈である。おそらく、COP最終日には、深夜まで会議が紛糾することもあるというので、ご苦労様と声をかけたくなる。
 午後は、昨日出席した国際応用システム研究所のサイドセッションで発表したスウェーデンの研究者の発表を、EUの会場で聞く。レリジアンスという用語で、社会の急激な変化や自然災害などから身を守る、あるいは多様な変化にも耐えうる地域社会を作るべきだという考えが根底にある。とても、大切なことだと思う。
 この後は、サイドイベントの会場は、大勢のNGOが市内で開催されるデモに参加するために、少しひっそりとする。私は、少し落ち着いた会場内で思わず複数の知人に会えて、懇談する。

 夕方に会場を後にするが、小売店では土曜日は4時または5時に閉店するのを、本当に体験する。店の前に来て、閉店準備を始めている店や、すでにシャッターを下ろした店を見るのは壮観である。こんなに、買い物客がいるのに、なぜ閉めるのかと。理由は、デンマークの法律で休業が義務づけられているとか。明日の日曜日は終日休業なので、閉店間際のどの店も買い物客ですごい混雑である。どこも仙台の初売りのように、通路までごった返していて、レジも長い行列。ウィンドウショッピングすら諦めてすぐに退散する。こちらのベビーカーは、日本のよりも2倍近く大きく立派な風洞も付いていて、なんだか小型の温室が乱雑に動いているようだ。二人用のベビーカーは、小型の物置ぐらい大きい。これらのベビーカーが、地下鉄や店内を堂々と動き回るので、なかなか壮観である。こちらの家族は、ほとんどが共働きのようだ。明日の日曜日は、買い物に出かける選択肢はないので、おそらく家族と一緒に家かどこかで過ごすのだろうと、推測する。
 結局、コペンハーゲンの記念に、買い物は抜きで、市内の目抜き通りを歩く。日没は4時と早く、閉店後なので繁華街も真っ暗、でもまだ、夕方6時である。結局、家族への土産は、空港の売店にしよう。ここは日曜も開いているので。でも、消費税が25%と高いので、止めようか。デンマークに来てから、ホテル代以外にはまだ一万円も使っていない。
(1)議長による温室効果ガス削減案の文書
 はじめに、温暖化による気温上昇の上限を「2℃」または「1.5℃」と定義。続いて、各国の数値目標を具体的に記している。
たとえば、各国は、2050年までに1990年に比較して温室効果ガスを「50%」、「85%」、または「95%」削減し、それ以降も削減の努力を続ける。
なかでも先進国は、2050年までに1990年に比較して温室効果ガスを「75-85%」、または「少なくとも80-95%」削減する。2020年までに1990年に比較して温室効果ガスを「25-40%」、または「30%、40%、45%」削減する。
開発途上国は、先進国の援助を得て、2020年までに温室効果ガスを何も対策を施さない場合の排出量に比べて「15-30%」減少する。

 この目標を達成するための手段として、国際協力の下での技術開発と技術移転、資金援助と能力開発、が提唱されている。文書にはこの他にもさまざまな補足事項が記されているものの、全体としてとても前向きな表現だと感嘆する。
 
(2)二酸化炭素の地下貯蔵(CCS)のセッション
 スウェーデンのランド大学の研究者によるパネルディスカッションかと思っていたら、Nordic Council(北欧理事会)という公的な組織が支援する国際研究プロジェクトだとわかる。内容は、最近日本でも耳にするCCSを対象として、単に技術面だけではなく、社会面、政策面からの検討の方が多く、とくに後者は初めて聞く内容だ。つまり、CCSは、化石燃料から排出される二酸化炭素を分離、輸送、貯蔵するものだが、今から導入するには幾分遅すぎるのではないか。むしろ、化石燃料の利用を是認して助長する恐れがあり、結果として代替エネルギーへの移行を遅らせることにもなる、というのだ。なるほど、こういう議論も重要なのだと納得する。研究費は、この北欧カウンシルから年間数億円が5年計画で計上されていて、ちょっとうらやましい。なるほど、北欧の研究者は、自国の政府機関に加えて、この北欧カウンシル、EUなど、複数の国際組織の研究プロジェクトを選択できる環境にあるのだと、実感する。

http://www.norden.org/en/cop15/nordic-activities-in-bella-center-during-cop15?set_language=en
 
(3) COP15の本会議
 この会議は、継続中のCOP15の第二回会議という位置づけで、マスコミだけが入場できない。私はバッジを見せて、最後部に陣取る。世界中のNGOがこの空間に集結しているようだ。
 会場は、おそらく利府の体育館よりも広く、幅がある。会場の前半分は政府代表団の席だ。各国二席しかなく、世界中の国に割り当てるので、それでも数多い。NGO席は、後列の右三分の一で、ここだけがほぼ満席。正面向かって左側には、同時通訳のブースが並び、空中の屋台のようだ。ロシア語、中国語、スペイン語、フランス語、アラビア語、英語で六カ国語である。アフリカの小国はフランス語が多く、南米はスペイン語が多い。これらの通訳を聞いて議事を進行する議長は、さぞかし優れものなのだろう。壇上の中央に座る女性が、この議長役のConnie Hedegaardさんである。デンマークの気候・エネルギー省大臣を経て本要職に着任し、私と同い年のようで軽くショックを受ける。こういう人がエネルギー大臣ならば、さぞかしデンマークのエネルギー規格も高度化するのだろうと、妙に納得する。
 
 以上で、二日目が終了した。今は、一晩寝て帰国日の朝。あと一時間でホテルを出て、空港に向かう。皆様、お世話になりましてありがとうございました。私は、とても有意義な体験ができました。自分の今後の研究テーマの選定や、学生への教育の肥やしに、そして人や家族を大切にする人生観の一端に触れた、思いも寄らぬ二日間でした。
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